ここで、私が個人的にこれらの教訓のいくつかをどのように学んできたか、手短にお話しさせていただきたいと思います。
HAL研究所において、我々はカービィが登場することになる最初のゲームを作り、わずか2万6000本の仮注文しか集められませんでした。これは嬉しい数字ではありませんでした。
そこで、我々は任天堂と宮本さんにその試作を見せました。任天堂はいくつか手直しを入れて同社が発売元になることを提案しました。
我々HAL研究所は同意しましたが、仮注文をすべてキャンセルしなければなりませんでした。
このゲームはアクションゲームでしたが、少し頑張ればほとんど誰もがフィニッシュできるように作られていました。それはプレイヤーにより困難な挑戦を与えるというトレンドに逆らうものでしたが、宮本さんは同意してくれました。その決定自体によっても、より多くの潜在顧客へと近づくことができました。
我々はまた、ユニバーサル・アピールについても話し合いました。
例えば、このゲームには当初、英語で発音すると「ティンクル・ポポ」の様に聞こえる名前をつけていました。
ベストチョイスではなかったようですね。
加えて、ピンク色で柔らかく、宙に浮かんでいるキャラクターなど全く受け入れられない、という欧米市場からの意見があったのです。
というわけで欧米では、パッケージのカービィの色がピンクから白に変えられていたのです。私が気づくことなどないと思っていたのでしょう。
気づいてましたよ。
最終的に、すべての議論はいい形で終結しました。ゲームの仕組みと性質を常時再検討することで、カービィの第一弾は2万6000本だけではなく、500万本以上を売り上げました。
こういった教訓を学んできましたが、皆様には、こういったことは任天堂だからこそできることだ、任天堂は違うのだ、とは結論づけていただきたくありません。
大学生から社長になるまでの私の長いキャリア全体を振り返ると、私はゲーム開発のプロセスは、どこの場所でも、重要な意味において同じであると言うことができます。
任天堂においても、(ゲーム開発は)ストレスに満ちていますし、いらいらすることもありますし、時間も人手も問題の解決方法も十分であるということはありません。
もし簡単な方法があるとしても、誰もまだそれを発見していません。
さて、「マストハブ」の未来について、話を戻しましょう。
身勝手なお話をさせていただければ、私はもちろん、次の「マストハブ」はニンテンドー3DSだと皆さんに思っていただきたいと願っています。
3つの全ての方法でマスマーケットの注目を得られるチャンスが同機にはあります。技術ゆえに、新しいゲームプレイゆえに、そしてプレイヤーがソーシャルに交流しあうその方法によって、です。
また、全世界的なアピールを実現し、今よりも更に多くの新規ゲームプレイヤーの皆様を魅了できる力があると当社は考えています。
それぞれのニンテンドー3DSシステムにはいくつかのソフトウェアがプリインストールされています。『ARゲームズ』であったり、『顔シューティング』であったり、『Miiスタジオ』などです。これらのソフトをプリインストールしたのには訳があります。
これらのソフトはソーシャルな交流を促進する目的で設計されています。オーナーの皆様には別の人に見せて、「これを見なきゃ!」と言っていただきたいのです。
また別のアプリケーションゆえに、オーナーの皆様には、新しいMiiやゲーム要素を受信するためにニンテンドー3DSを持ち歩いていただきたいと思っています。
オーナーの皆様は目的がある時だけ積極的にネットワークに参加するのではありません。時にネットワークの方でオーナーを見つけ出します。
事実、日本の任天堂社内では、自分のシステムを持って席を離れ、特別な理由もなくデータ交換のためだけにオフィスとは違う階を歩き回る社員が出はじめました。
通常なら、このような行為について、私は社内に警告文を出していたでしょう。
しかし、実はこれ、私もやっていることなのです!
ワイヤレス通信とデジタルダウンロード分野全般において、任天堂に改善すべき点があることは認めなければなりません。
今までのところ、当社のWiiウェアとDSiウェアサービスは期待していたとおりに機能していません。
そこでニンテンドー3DSでは、特定の改善を実行しました。
日本と欧州でニンテンドー3DSによりサポートされるコネクティビティーについては、いくつかの点を既に発表しております。
アメリカでの計画について説明するため、米国任天堂社長のReggie Fils-Aimeを壇上に呼びたいと思います。