Nintendo Nintendo GDC Game Developers Conference 岩田聡 GDC講演内容
2011年3月2日(現地時間)サンフランシスコで行われたGDC(ゲーム開発者会議)。
その中で、任天堂社長の岩田聡と米国任天堂社長のReggie Fils-Aimeがゲーム開発者向けに行った講演会の動画とその日本語訳をご紹介します。
※禁無断転載。一部を引用する場合は、引用元のURLを必ず併記してください。
岩田聡:

そして、この点も考えてください。大規模なオンラインアプリケーションストアでは今日数万ものゲームがダウンロード可能です。

ゲーム開発は混沌の中にあります。

もちろん、そういったダウンローダブルゲームのほとんどは小売りされるソフトに比べて開発に要するコストはかなり低いものです。しかし、これらがどんな収益を生み出すでしょう?
スクリーンダイジェストの調べによりますと、去年の主要モバイルサービスにおける全アプリケーションダウンロードのうちの92%が無料だったそうです。
また、無料ではないソフトも、その多くが極めて安い価格で売られています。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

それに答えるためには、私たちのビジネスに対する二つの全く異なった見方を理解する必要があります。すると一つの質問に突き当たります:価値の高いゲームを作り続けることが、最も優先される事項かどうか? です。

専用ゲーム機を作っている我々の目的は何か、まず考えてください。

任天堂は、「ゲーム機は、どうしても遊びたいソフトを楽しんでいただくために仕方なく買っていただくものだ」と考えています。ご存じのように任天堂は、他社製プラットフォーム向けにゲームを提供しません。お客様にいい意味で驚いてもらうためには、自社ハードと自社ソフトをマッチさせることが最も確実な方法だと考えるからです。当社はまず第一にゲームクリエーターであり、その次にハードウェア製造者なのです。

私たちは、お客様にどうしてもソフトの高い価値を認めていただきたいのです。

プレイステーションやXboxのビジネスはいくつかの点で任天堂とは異なりますが、この考えについては100%共有していると私は思います。我々は、高品質のビデオゲームソフトウェアの高い価値を証明するためにプラットフォームを設計しています。

しかし、ビデオゲームのビジネスを全く異なった方法で見る第2の方法も存在します。スマートフォンやソーシャルネットワークのプラットフォームの目的は、そのプラットフォームがつくられた目的もそうですが、私たちとは異なっています。

これらのプラットフォームには、ビデオゲームソフトの高い価値を維持する動機がありません。彼らにとっては、コンテンツは誰か他の人が作るものであり、彼らのプラットフォームにより多くのソフトを集めることが目標となります。より多くの量を集められればお金が流れるのです。量こそ利益の手段であり、価値は大した意味を持たないのです。

つまり、ビデオゲームビジネスに対する二つの全く異なるアプローチを我々は今見ているわけです。一つの方向性は往々にしてあまりにも巨大な投資が必要になるものであり、そしてもう一つは高い価値を保たないゲームを供給するものです。

しかし事実は、我々が生み出すものには価値があり、我々はその価値を守るべきなのです。

もちろん、すべてが失われたわけではありません。『Just Dance』、『Wii Fit』、『uDraw』、『Wii Sports』、『トモダチコレクション』や『絵心教室DS』のような多岐にわたるゲームは、ニンテンドープラットフォーム上だけを見ても、多くのファンを得ました。そして他のプラットフォームでも同じような例があります。

ここで、ゲームが注目されるために必要ないくつかのことを提案したいと思います。

まず、中心となる魅力はほぼ即座に理解してもらえるようにする必要があります。あなたが提案することを知るためにゲームプレイヤーが10分を費やしてくれると思っているとしたら、それは遅すぎるかもしれません。ゲームの導入シーケンスは今まで以上に重要性を増しています。

2番目に、あなたのゲームのユニークな特質は、プレイヤーが素早く簡単に他の人に説明できるようなものであらねばなりません。ソーシャルな推薦は宣伝広告よりも遥かに説得力があります。ただし、簡単に理解できるアイデアでなければいけません。

これら両方の条件が満たされれば、ティッピングポイント(転換点)に到達して口コミで広がり、ゲームがそれ自体で売れ始める可能性が出てきます。これが我々全員が目指すハッピーエンドのシナリオです。

これこそ、私たちが求める究極の解決策です。

こういったお話をしてきましたが、この挑戦には一つの解決策があります。それは、「イノベーション」の一語で言い表せます。

もちろん、その定義はさまざまでしょう。ですから任天堂での定義をお話しします。

簡単なことです。私たちは常に自問をしています。「いま不可能だと思っていることで、可能にできることはないだろうか?」と。

私たちは、何かを不可能だと思って受け入れてしまうだけで思考が閉ざされ、真のイノベーションへの障害になってしまうと考えています。

例えば、かつて一度に見られる画面の数は一つと考えられていました。けれど今、多くの人々がTVを見ながらPCを、あるいはタブレットや電話の画面も……全て同時に見ているのです。

また2画面の人気はニンテンドーDSが世界でおよそ1億5000万台売れていることで証明されました。

時として、可能なことは間違った結論の背後に潜んでいることがあるのです。

今日はTime Gate StudiosのCEOの言葉から私のスピーチを始めさせていただきました。締めくくりも同様にしたいと思います。

彼は言いました。「我々は常に、わくわくするようなゲームのコンセプトを持っており、そして、それが真のビジネスチャンスになれるかどうか検証する。それと反対のアプローチ、すなわち今現在人気のあるビジネス傾向を特定し、そこからどうやって利益を上げるかを検討するというアプローチは、ぞっとする考えだ」と。

GDCが、開発者がお互いから学ぶことができる場だとすれば、このことから学べるはずです。

自分の情熱を信じてください。

自分の夢を信じてください。

25年間にわたり、ゲーム開発者は不可能を可能にしてきました。

ですから、なぜここで歩みを止める必要があるのでしょうか?

本日はご清聴ありがとうございました。

このページの上へ
任天堂ホームページ ※このページの内容は海外での講演内容のため、一部英語での表現が含まれています。