10 | 「スマブラ・ルビサファ同世代仮説」は非常に興味深く、これが正しいとすれば、特に国内市場における大きなチャンスになると思う。18歳、25歳というところの層のアテンションが非常に高まっている。一方で、モバイルのゲームの市場は、高品質化が進む一方で体験の新鮮さというところが少し飽和状態にある。この状況で、どうレバレッジをかけていく準備を始めているか、あるいは始めていないのか、その辺りに関して教えてほしい。 |
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岩田: まず、ご指摘いただいた通り、『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS』でアテンションを3DSに向けていただいた方がソーシャルメディアを一番活用されている世代でもあって、そういう方たちに魅力を広めていただいたおかげで、『スマブラ』の熱量というのは業界の人たちが「3DSで『スマブラ』を出したら大体これぐらい売れるのではないか」という見立てを超えるいいスタートが切れたということもあると思いますし、それが『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』の予約にもつながっています。これは海外でも似た傾向があります。もう一つは、ゲームボーイアドバンス向けの『ポケットモンスター ルビー・サファイア』というのは、当時このゲームを遊んでいただいた世代の方にとってものすごく心に深く刺さっている思い出のポケモンソフトであって、「新しいポケモンのことは最近よく分からないけど、これなら是非遊びたい」というふうに手に取っていただくきっかけになりました。いったんこのように高い稼働状態になりますと、3DSにはほかにも面白いタイトルがすごくたくさんあり、『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』や『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS』を遊んで面白かった人に次の1本として何をご提案すべきなのかを考えることになりますが、例えば「クラブニンテンドー」等の情報によって、「どのソフトとどのソフトはどのように相関があって、どのような年齢層のお客様にどういうところがアピールポイントになっている」というのは、ある意味全て分かっています。その方たちの中には、ゲーム専用機からしばらく離れていた方もおられますので、『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS』と『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』の後、今度はどのような次の1本のご提案をして、稼働を維持できるか否かということが非常に重要になってくると思います。ただ、これらのことについて特に今、3DSもWii Uもそうなのですが、デジタルでものをやりとりするための仕組みや、お客様に新しくお知らせを届けるための仕組みが充実してきましたので、それらの仕組みを使って、いったん稼働が高まったその世代の方に次々と、「次はこういうタイトルで遊んではいかがですか」ということをご提案していきたいと考えています。最終的には、今年の1月に「これからのプラットフォームはゲーム専用機とスマートデバイスをうまくかみ合わせて、ニンテンドーネットワークIDの下に統合したい」と申しあげたのですが、ニンテンドーネットワークID経由で、例えば「このソフトとこのソフトをこう遊んでいる人だったら、このソフトを楽しんでいただける可能性は非常に高いはずだ」ということを前提にお客様に個別のご提案を行うことを来年に向けて実行しようとしている一つのターゲットとしていますので、是非そういうところに向けて動きたいと思っています。 |
11 | 以前の説明会で、スマートフォンの活用という大きなテーマについて2014年内に具体的なものが出るというお話があった。今回のプレゼンテーションの中でもスマートデバイス関連の話がいくつかあったが、それはそういったものを指しているのか。それとも、もう少し具体的な計画があるのか。 |
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岩田: 基本的には、任天堂のスマートデバイスの活用というのは、「スマートデバイスで直接ビジネスをする」というよりは「スマートデバイスでお客様とより強いつながりをつくる」ということを考えています。「そのためにできることは何だろう」、「自分たちがやるべきことは何だろう」ということを継続的に検討しています。お話のあったアプリとは少し違う話ですが、現在、任天堂ホームページはスマートデバイスでご覧いただいてもスマートデバイスのレイアウトでは表示されず、この面では非常に対応が遅れている会社でお恥ずかしいことですが、これを年内にはスマートデバイス対応にする予定です。また、アメリカではスマートデバイスからのアクセスを前提にして子供さんと親御さんのために任天堂キャラクターを紹介する「Play Nintendo」というウェブサイトを今月オープンしました。これはplay.nintendo.com(最新のブラウザーでご覧ください)でご覧いただけますので、もしよろしければご覧ください。今はアメリカだけで行っていますが、「これからこういうことを世界中でやっていきたい」と宮本とも話しているところです。 1月の経営方針説明会で年内に出したいとお話ししていた開発中のアプリはどういうものかと言いますと、スマートデバイスでMiiを活用するアプリです。Miiをご存知の方も多いと思うのですが、Wiiの時にご提案した、「任天堂のゲーム機上でプレイヤーあるいはプレイヤーの家族や友達の似顔絵をつくって、その分身がゲームの中にも登場する」というもので、今はWii Uやニンテンドー3DSでも使えます。Miiは、Miiの人口が増えれば増えるほど、よく似た面白いMiiがたくさんいればいるほど、ゲームが面白くなります。『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』や『大乱闘スマッシュブラザーズ for ニンテンドー3DS』の中にもMiiが出てきますし、ニンテンドー3DSの『すれちがいMii広場』はたくさんのお客様に遊んでいただきましたし、『トモダチコレクション』はMiiがなければおそらく生まれなかったであろうゲームソフトです。もともとニンテンドーDS用の『トモダチコレクション』を開発していた過程で生まれた試作品を、宮本が以前から「こういうことがやりたい」と言っていたのを聞いていましたので、「宮本さんがやりたいのはこれじゃないんですか?」と持って行った時にMiiが生まれたと言ってよいと思います。もし、Mii人口を増やせて、お客様のスマートデバイス上で使えるようになれば、例えば、ソーシャルメディアで使っている自分のアイコンも簡単にMiiでつくれるようになれば、きっと(お客様に)喜んでいただけるだろうと思い、そのようなものを開発しています。ただ、この年末商戦の主軸は『スマッシュブラザーズ』や『ポケモン』になることがはっきりしていますし、Miiを使ったアプリをある程度つくると「もっとこうだったらいいのに」ということがいろいろ出てきましたので、「どうせやるならお客様との強いつながりを本当に強固につくれる状態で出した方がよい」と考えました。任天堂が初めてスマートデバイス向けのアプリをリリースする際は、たくさんの人に着目していただけて、「とりあえずダウンロードしてみよう」と思っていただけると思いますので、これを最大限活用しようとしますと、年内に中途半端に出すよりは、「もうちょっと磨いてからご提案しよう」と考えています。Miiを活用してお客様とより強いつながりをつくり、お客様にはそれで楽しんでいただけて、ある程度頻繁に起動していただけるアプリにできると、私たちは手応えを持っていますが、それを年内ではなくて来年リリースしたいと思っています。 |
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QOLサービスについて。これは御社とお客様の間で完結するものなのか。あるいは、ほかのゲームビジネスのようにサードパーティーさんにもソフトウェアの開発をオープンにされてエコシステム(※)みたいなものをつくっていくのか。 ※パートナーシップを組み、共存・共栄していく仕組み |
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岩田: 今回のQOL事業はプラットフォームという言葉を使っていることである程度表現したつもりですが、当社とお客様の間だけで完結するものではなくて、この仕組みを使ったら、「例えば自分たちはこんな提案をお客様にできる」というアイデアをお持ちのいろいろなパートナーの方々にも参加いただけるようにしたいと思っています。通常、任天堂が実際にサービスを運用し、具体的にものをお見せするよりも、これほど早い段階で、アイデアの肝をこれほど踏み込んでお話しするのは珍しいことであるというのは、任天堂を長年ご覧になっているみなさんにはご理解いただけるのではないかと思います。今回あえて踏み込んでお話ししているのは、「睡眠と疲労をテーマにこんなプラットフォームをつくろうとしています」と任天堂が公言することで、そういったパートナーのみなさんとのやりとりがオープンに始められるということが非常に大きいと考えたからです。これは、私たちからアプローチさせていただくこともあるでしょうし、逆に先方から「任天堂がこんな発表をしたから、うちはこんな技術やこんな可能性を持っているんだけど」ということでご提案いただいてもよいと思います。任天堂だけで全てが完結するタイプの事業ではないだけに、一定のこんな考え方で、これからサービス、ビジネスを展開していきますということを、早めにお伝えした方が今後の展開上有利であるという判断があって今回具体的なお話をさせていただきました。 |