さて、中間期はこのような結果で好調に推移したとはいえ、昨今のように金融危機が同時多発的に世界に広がり、ビジネス環境が劇的に変化していることが、ゲーム市場にどのような影響を与えているのか、ということが、みなさんにとっての関心事ではないかと思います。
もちろん、サブプライム問題そのものは、ごく最近言われ始めたことではなく、今年春のベア・スターンズの破綻の時点で、すでにアメリカでは景気の減速懸念が強まっていましたし、事実、今年に入ってから、アメリカの消費統計全般はよくない数字が出ていました。そういう環境の中で、先ほどお見せしたようにゲーム市場は市場の拡大ができていたわけですから、「ビデオゲーム市場は景気動向の影響を受けにくい」という過去の経験則は、これまでのところ成立していると言えます。ただ、最近になって、ビジネスにより大きなインパクトのある変化が起こっていますので、先行きを心配される方も多いと思います。
これは、今年に入ってから先月まで、NPDの、アメリカ市場で、1週間あたり、Wii、PS3、Xbox360が何台売れているかを示すグラフです。9月には、Xbox360が値下げされ、とうとうXboxのエントリーモデルはWiiよりも安くなりました。結果として、Xbox360は伸びましたが、Wiiは全く影響を受けていないことがわかります。
Wiiは、増産によって昨年と今年では市場に出荷している量が大きく違いますので、昨年との比較で単純には語れないのですが、薄い色で表現した昨年との比較をご覧いただいても、今までのところ、金融危機の影響は全く感じられません。NPDのデータは毎月1回しか出ませんが、自社商品については、毎週の週販のデータが取れています。私は毎週それを注意深く見ているんですが、これまでのところ、減速懸念は感じられません。もちろん、今後も注意深く見ていきますが、私たちの目指している販売数の実現は十分可能ではないかと感じています。しかし、9月までのデータだけでは、安心できない、10月になってからマーケットは変化したんだという見方があることもよくわかります。今年は、商戦期の立ち上がりが遅くなるのではないかと言われているのですが、NOAからの報告によりますと、先週はWiiは約21万台の販売となり、昨年と比較して大幅に増えていますし、また、推移を見ましても季節動向に見合った週間販売数の増加が順調に進んでいることが確認されていますので、今すぐ、ゲームビジネスに景気の影響が及ぶことは考えにくい状況です。
これは、同じくアメリカにおける、昨年と今年のDSとPSPの毎月の販売数を比較したものです。 薄い色が昨年、濃い色が今年です。
昨年に比べてDSが好調な状態は、今年の初めから最近まで変わっておりません。
アメリカでは、DSによるゲーム人口拡大が本格的に始まったのが、世界で最も遅かったということもあり、日本と全く状況が違います。現時点ではWiiの勢いが大幅に上回っていますので、アメリカのDSはあまり話題になっていない印象があるのですが、安定して高いレベルの販売は続いています。直近の週では、DSは週販で約14万台と、こちらも、順調に季節動向に沿った販売数が拡大していく手応えを感じております。
これはヨーロッパの据置型ハードの販売状況です。アメリカと同じ傾向ですが、PS3とXbox360の値下げやニューモデルの発売、無償ソフトのバンドルなどによる販促活動はアメリカ以上にアグレッシブな状況になっています。特にマイクロソフトさんは今年に入ってからヨーロッパで2回の値下げをされ、極めてアグレッシブな販促活動をかけています。しかし、それにもかかわらず、他機種の値下げやソフトのバンドルなどに、Wiiの販売ペースはほとんど影響を受けていないということが見てとれます。
これは、ヨーロッパの携帯型の推移です。昨年のヨーロッパのDS市場は非常に好調だったと言えるのですが、今年はそれを上回る状況が続いています。
もちろん、これだけビジネス環境が変化しているので、今後も注視していく必要はありますが、海外市場におけるDSやWiiの需要は、景気動向の影響を受ける兆候は、今日まで全く感じられていません。また、現地の小売店さんとも、いろいろな情報交換をしております。ほとんどの小売店さんが、いろいろな分野で消費が落ち込むことを予想している中で、当社製品に関しては、そのことよりも、「品物が足らないんだ。もっとくれ」というお話をされることがほとんど、というのが現状です。
景気動向には左右されずにアメリカやヨーロッパでDSの市場を牽引しているのは、超長寿命商品となったTouch! Generationsのソフト群です。特にこれら3つのソフトが、新作に極端に依存する体質だったゲームビジネスに与えた影響は、私たちにとっても革命的な出来事でした。