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2008年10月31日(金)経営方針説明会/第2四半期(中間)決算説明会
任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文

Wiiでも、長期にわたって売れ続けているソフトがいくつもあるんですが、その中でも特に勢いがあると感じているのが昨年末に日本で発売し、今年春にアメリカやヨーロッパで発売したWii Fitです。


日本でも、この年末には300万本を突破できるんではないかと感じているんですが、アメリカやヨーロッパは市場の底の深さが全く異なりますので、ちょうど、ニンテンドッグスがそうであったように、日本を遥かに超える数まで普及が進みそうな手応えがあります。現在、グラフを見ていただくとおわかりいただける通り、全く傾きが変わらず一直線に伸びて見えますが、これは、バランスWiiボードの製造が供給上の制約となってしまっているために、出荷した量が、毎週のように売り切れてしまうためです。9月末には世界の累計出荷数は876万個(※)となっており、年内に1,000万個を大きく超えることは確実な状況です。
ちなみに、先日NOAのレジー・フィザメイ社長から聞いたのですけれども、ニューヨークにあるニンテンドーワールドストアで、毎朝開店前に数十人の行列ができるそうです。その人たちは全員、開店と同時にレジにダッシュされるそうです。そして、ほぼ全員がWii Fitを買ってくださるそうです。そういうことが最近は連日続いている。そのうち3〜4人に1人はWiiのハードも一緒に買ってくださるそうです。今、Wii Fitは、平均すると毎週10万台以上がアメリカでコンスタントに売れているんですが、先週は約15万台が売れました。今のところは、出荷できた量が毎週のように売り切れるという状態が続いておりまして、Wii本体を牽引するソフトとしては、これまで同梱のWii Sportsがその最大の存在だったわけですが、それに替わって、Wii Fitが主役になってきたという感じがいたします。アメリカは、この3、4、5月の「スマッシュブラザーズX」、「マリオカートWii」、「Wii Fit」の連続コンボが最も効果的に効いたマーケットであると感じています。

(※)会場では867万個と発言いたしましたが、正しくは876万個です。お詫びして訂正させていただきます。

以前から、Wiiは史上最速のペースで普及するプラットフォームであるということを、お話してまいりましたが、今日は、ソフトの面からも少しお話をしたいと思います。これは、NPDのデータから、新しい3つのプラットフォーム毎の発売以来の累計ソフト販売数をグラフにしたものです。Xbox360は、1年先行していますので、この先もあるわけですが、発売から同じタイミングで比較させていただくということでご容赦ください。2006年11月に発売したWiiのソフト市場は、昨年末に2回目の年末商戦を迎えて急拡大し、その後、今年の3月から5月にかけて、先ほどお話したスマッシュブラザーズX、マリオカートWii、Wii Fitと、Wii本体の普及を担う3本柱を連続して投入することで、一気にその普及ペースを加速させました。ご覧のように、Wiiはハードの普及ペースが史上最速であるだけでなく、ソフトの普及も非常に早いペースで進んでいるそういうプラットフォームであることがおわかりいただけます。しかし、一般的に、Wiiでは任天堂発売のソフト、いわゆるファーストパーティのソフトばかりが上位を占めていて、ソフトメーカーさんのソフト、いわゆるサードパーティのソフトのビジネスチャンスが小さいという思い込みが、市場に多く広がっているということも事実です。


これは、特に日本国内で強く印象を持たれていると感じるんですけれども、今年の春、決算説明会のときにデータをお示しして、必ずしもそうでないんですよということをお話しした後でさえ、ソフトメーカーさんのソフトが売れている海外であっても相変わらず、このような思い込みにとらわれておられる方が非常に多いように感じておりました。
今年の7月にロサンゼルスで開催されたE3のアナリスト向けのイベントで、その思い込みが間違いなんですよということを、NOAのレジー社長がデータを示してプレゼンテーションをしたんですけれども、今日は、それを最新のデータに更新して持ってきました。


それがこれです。Wiiは、発売前にはこのような市場を生み出すということを業界の方々に期待されていたわけではありませんし、ソフトメーカーさんはある意味他社さんのプラットフォームに賭けておられたという側面がありますから、1年目の出足は、ハードと自社ソフトは売れていっても、ソフトメーカーさんのソフトは売れていないという循環でした。しかし、発売から1年を経過するあたりから、ソフトメーカーさんのソフトにも大きなヒットが出始めて、その後は、順調に推移しているということが、このグラフから読み取れると思います。また、マルチプラットフォームのソフトは任天堂プラットフォームでは数字が伸びないとか、サードパーティは任天堂プラットフォームで数字がのばせない、というような先入観を、多くの方々がお持ちだったことは事実なんですが、それに対する例外がいくつも生まれて、このような印象は単なる思い込みに過ぎないんだということがだんだん明らかになってくるようになりました。ちなみに、これはサードパーティだけのグラフですが、ファーストパーティだけを取り出しますと、


このようになります。Wiiの独自性がはっきりとおわかりいただけるグラフです。みなさまもご存知の通り、ゲームビジネスにおけるプラットフォームの普及には、いわゆる鶏と卵問題というのが存在します。すなわち、ハードの普及台数が多くならないと、ソフトメーカーさんにとって魅力的な市場にならないという事実がある一方で、魅力的なソフトが充実していないとハードは売れない、ということがあるからです。うまくいかないプラットフォームは、この鶏と卵問題を解決できずに苦しむことになります。これは私たちもゲームキューブでまさにこの問題を乗り越えることができずに、非常に厳しい経験をしてきました。私たちは、プラットフォームの発売後2年ほどの、自社発売ソフト、いわゆるファーストパーティソフトの最大の役割は、ハードの普及を促進して、ソフトメーカーさんにとって魅力ある市場の流れを早期に確立することにあると考えてきました。Wiiでは、いくつかのロングセラーのヒットソフトに恵まれるという幸運もありまして、うまく流れを作ることができたと思います。もし、ソフトのヒットがロングセラー化していなければ、一時的にマーケットが盛り上がっても、すぐに次のソフトが必要になるということになるわけですが、残念ながら任天堂や任天堂のパートナー企業さんの開発人員は無限にいるわけではありません。したがって、それほど多数のソフトをどんどん展開できるわけではありません。ですから自社ソフトを、自社タイトルを中心にした市場を確立するということにおいては、任天堂の持つ強みを多面的に活かして、ロングセラーを作るということが求められたわけですが、今回は、それが非常にうまく廻ったということだと認識しております。

もうひとつ違う角度からデータを見たいと思います。


全世界の出荷ベースで100万本を超えたDSタイトルの数です。今年3月末までの累計で、任天堂・ポケモンが29タイトル、ソフトメーカーさんのタイトルが28タイトルだったわけですが、この9月末までの累計では、任天堂・ポケモンのタイトルが1タイトル増えて30タイトルになったのに対し、ソフトメーカーさんのタイトルは11タイトル増えて39タイトルと、ついにソフトメーカーさんのミリオンセラータイトル数が逆転しました。


Wiiについても、全世界の出荷ベースで100万本を超えたタイトルは、今年3月末までの累計では、任天堂・ポケモンが14タイトル、ソフトメーカーさんのタイトルが12タイトルだったんですが、この9月末までの累計では、任天堂・ポケモンのタイトルが1タイトル増えて15タイトル、ソフトメーカーさんのタイトルは9タイトル増えて21タイトルと、やはりこちらも、ワールドワイドのミリオンセラーのタイトル数ではソフトメーカーさんの方が多くなりました。
このように、任天堂プラットフォームでは任天堂の自社ソフトばっかりが売れるんだ、サードパーティのソフトメーカーさんのソフトが売れないんだという見方は、ワールドワイドの実績で見ますと、全く見当違いなものであることがおわかりいただけるのではないかと思います。


さて、今日はこれまで海外の話からお話してまいりましたが、国内の状況にも少し触れておきたいと思います。ゲーム人口の拡大は、まず日本で起こり、それが、ヨーロッパ、アメリカと広がっていったのはみなさんご存知の通りですが、そのためもあって、


国内市場の流れは、海外市場の先行指標になるんじゃないか、というような見方をされておられる方がいらっしゃるんじゃないかと思います。
事実、昨年秋以降、国内市場での潮目が替わってきまして、DSの販売ペースが鈍化しましたし、今年の春以降、アメリカやヨーロッパは、Wiiの販売が加速しているにもかかわらず、日本では、海外市場に見られるような勢いがありませんから、この仮説が正しいとすれば、来年、海外市場でDSやWiiが失速するじゃないか、という懸念をお持ちの方も多いのではないかと思います。



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