11-1 | 3DSについてどうして今回発表があったような値下げができたのか。日本的な経営をしている会社は非常に意思決定のスピードが遅く、発売してから半年足らずで価格を1万円も下げるようなことはしない会社の方が多い。任天堂のこの決定の背景は、属人的な岩田社長の決断によるものか、それとも組織的なことか教えてほしい。また、開発リソースについても聞きたい。一つはWii UとWii、DSと3DSに開発リソースを割かれていて、特にWii Uはかなりリッチなコンテンツなので、開発人月を割かないとできない状況になっていて、そちらに社内リソースを取られているのではないか。今後3DSを再起させて、さらにWii Uを拡大するのに社内リソースをどう持っていこうと考えているのか。もう一つが、サードパーティーの方で、当社のように薄く広く売るといった戦略をとらず、限定版が初回出荷の半分以上というマニアックなビジネスをしているところが増えているので、薄く広くのゲームをサードパーティーにつくってもらえていない。この辺りはどう対応しようと考えておられるのか。 |
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11-1 | 岩田: 値下げを決断できた理由は、ゲームキューブの教訓でしょうか。ですから、その意味では、少々属人的、すなわち、現経営陣は全員、「ゲームキューブの時にチャンスがあったのに、それを活かせなかった」という体験をしてきたわけですから、これは私1人がということではなくて、今の意思決定をしている経営陣の中でそういう意識が共有されているということが大きいと思います。もう一つの要因としては、当社の財務体質がございます。「このビジネスは非常にハイリスクなので、流動性を厚く持たせてください。厚く持っているから、選択肢が増えるのです」ということをこれまで繰り返し申し上げてまいりました。この間、DSもWiiも良い循環で回った時期が続きましたので、「いや、そんなにお金を持っていなくても大丈夫じゃないか」というご指摘をいただくケースもあったのですが、やはりこういう局面でこれだけの決断をしても、そして同時にWii Uの開発を進め、そのビジネスリスクも同時に背負っていくということも含めて決断できるのは、そういう要素もあると思います。これが良い結果になるように最大限努力いたします。 |
11-2 | サードパーティーさん、モバゲーさんやグリーさんでもそうだと思うが、非常にマニアックな方向にビジネスが向いていて、当社だけがライトユーザー向けのタイトルを投入するというような状況になってしまっている。サードパーティーさんの開発の考え方を当社の方からアプローチして変えるということは可能か。できないのであれば、当社が自社でリソースを投入してそういうものを出し続けるしかないという考えなのか。 |
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11-2 | 岩田: 今おっしゃったように、私たちがサードパーティーの開発者の方の考えを変えるようにアプローチするというようなことは、私たちは考えておりません。むしろ、ソフトメーカーさんのお持ちになっている良い面をどうしたら活かせるのかとか、どこにチャンスがあるのかというお話し合いであれば、これは喜んですべきだと思いますし、現にしてもいます。また、逆にソフトメーカーさんのお客様で自分たちのアピールしやすい、得意なファン層をお持ちの会社さんがあったら、その会社さんと私たちのプラットフォームの間の距離を近付けるためにどうしたらいいかということを一緒に考えていくべきではないかと思います。私たちは、(先方が望んでおられないのに)他社さんに何かをお伝えして変わっていただくというような発想はしておりません。 |
12 | アイテム課金のビジネスについて。ソフトメーカーの中にはアイテム課金のビジネスにリソースをシフトしている会社も出てきており、ソフトメーカーにとって課金を自由にできるプラットフォームの魅力が高まっていると思うが、それに対してどう考えているか。それに関連して、先ほどデジタル・ディストリビューションという話があったが、オンラインビジネスの売上高は2011年3月期は80億円だったと記憶しているが、それがどういう時間軸でどのような規模で増えていくというイメージなのか教えてほしい。 |
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12 | 岩田: アイテム課金そのものを、私は全然否定しておりません。以前に私が申し上げたことがあるのは、「ゲームを無料で始めていいですよ、というやり方でアイテム課金をするというビジネス構造は、私たちがやろうとしているゲームビジネスと価値のアピールの仕方が全く違いますので、その枠組みでは自分たちのコンテンツの持つプレミアムな価値というものが傷つくのではないか」ということです。(※2) |